「正しい」より「上手くいく」を選択しよう②「上手くいく」を選択する方法
「正しい」より「上手くいく」を選択する方法は、1「上手くいっていない」ことに気づくこと、2「正しくない」ことをしてみることです。
「上手くいく」を選択する方法1 「上手くいっていない」ことに気づく
前回の記事では、「正しい」と「上手くいく」は別であると書きました。今回は、「上手くいく」を選択する方法について書こうと思います。
必要なことの一つ目は、「上手くいっていない」ことへの気づきです。気づくためには「上手くいっている」かどうかの確認をすることが必要ですが、意識しないとなかなか難しいかもしれません。


「上手くいっていない」への気づきを妨げる要因を挙げてみます。
「上手くいっていない」に気付けないわけ
「正しい」と「上手くいく」の違いに気づいていないから
前回の記事のように「正しい」と「上手くいく」は違うということを知らないと、自分の「正しさ」を客観的に見ることができなくなってしまい、「これが目標到達のための唯一絶対の方法だ!」と思ってしまいます。そして、その方向で進み続けても目標に近づけないとき、「まだまだ努力が足りないからだ!」と認識するため、さらにさらに上手くいかない道を突き進んでしまいます。
自分はそれでうまくいったから
その人の中に「正しさ」が生まれる大きな要因として、自分はそれで上手くいったという成功体験があります。
しかし、自分はその時それでうまくいっても、今目の前にある問題に対して同じように上手くいくとは限りません。
そのわけは、あなたが上手くいったときとは条件が違うからです。条件が違う事柄に同じ働きかけをすると、得られる結果は異なるものになります。
常識だから、みんなそうしているから
常識とは多数派の意見にすぎず、真実ではありません。このことをわかっていないと、集団のみんなで一斉に勘違いをしてしまいます。選挙によって多数決の民意で成り立つ民主主義国家が差別、人権侵害、虐殺や戦争を起こすのは、みんなで勘違いをしていると言えるでしょう。
親、先輩、権威ある人がそう言っていたから
親、先輩、権威ある人がそう言っていたなら真実と言えるのでしょうか?残念ながら、彼らは神ではなく人である以上、真実はわからないのです。
「正しさ」から離れるのが怖いから
その人は、その人にとっての「正しさ」によって行動、生き方を決めています。その「正しさ」が揺らぐということは、どのようにして行動し、生きていったらいいかわからなくなるという恐怖につながります。だから、みんな自分の「正しさ」を変えたくないのです。
「上手くいく」を選択する方法2「正しくない」ことをする
「上手くいけばそれでいい」=実用主義(プラグマティズム)
「正しい・正しくない」という次元の横軸で見ていたところに「上手くいっている・いない」という別次元の縦軸を加え、縦軸の「上手くいく」を目指しましょう、という考え方が実用主義(プラグマティズム)です。すでに述べたように、「正しさ」は主観的で人によって違う上にうまくいくとは限りません。互いが「正しさ」にこだわると争いになるだけで、支援にならないことも多いです。対して「上手くいっているかどうか」は客観的で観察可能かつ柔軟で争いにならず、幸せにつながりやすい考え方だと思います。

「今が苦しくても将来役に立つこともある」と思われる方もいるかもしれません。しかし、これも「正しさ」へのこだわりではないでしょうか。苦しさによって副次的に得るメリットはあり得なくはないが、その確率はいかほどでしょう?未来のことはわからないし、他者=子どもの幸せが何かもわかりません。あなたが上手くいった方法でも、条件が変わると結果も変わってきます。しかし、現在の様子、幸福度は現在の行動変化からうかがい知ることができます。
それに、苦しさ自体は心理的には大きなデメリットであり、苦しさ>楽しさであることの学習効果は薄いことがわかっています。「今楽しくて将来役に立つ」ことの方が能力の伸びも大きく、心理的にも健康的なのではないでしょうか。
「上手くいく」を選択するために、「正しくない」ことをする

A君に対してあなたが「正しい」と思うことをした結果、上手くいっているなら、その「正しさ」を実行し続けることで、「上手くいく」が継続します。
しかし、B君に対してあなたが「正しい」と思うことをした結果、上手くいっていないなら、「上手くいく」を選択するために必要なことは「正しくない」ことをすることです。

あなたの「正しさ」によってA君との関係は上手くいっている =A君とあなたの関係性として正の方程式が成り立っている =正の働きかけで正の結果が出る →あなたの「正しさ」を継続する →「上手くいく」が継続する |
あなたの「正しさ」によってB君との関係は上手くいっていない →「上手くいく」に変換される |
「上手くいかない」を「上手くいく」に変える例
前回の記事の「正しい」のに「上手くいかない」例を「上手くいく」に変えてみようと思います。
・強く生きていくには厳しさが必要だ!俺の時代は殴ってでも学校に行かされた! →子どもは行き渋りに至る心理が変わらないまま、傷つきをさらに深める →精神を病んでいく →引きこもり、精神疾患、自死 ↓ 厳しさはもっと心の強さが育ってからにし、弱り切っている今は休養することを認め、心理的ケアによってまず心の弱りを回復する。 |
・先生(目上の人)は敬うべき、正しい言葉遣いをすべき →拒否反応 →心身症、不登校 ↓ 新しい対応 言葉遣いを正すより子どもの気持ちを共感的に理解する対応をし、関係性を良くする。 |
・悪いことをした子は叱られるべき →叱られることが多い →子ども「叱られたくない」 →嘘をつく、さらに落ち着かなくなり、失敗も増える・・ ↓ 新しい対応 叱るよりスキルの習得を支援する。衝動性の出やすくなる要因を知って減らす、気持ちを言葉で代弁し言語理解を補助、失敗時は次どうすればいいか考えることで失敗を減らす方法を見直すなどにより。 |
・話を聞かない子は叱られるべき →子ども・・・聞いているが理解できない、学習課題が合っておらず、学び取れない、他の刺激によって脳内に情報があふれてしまい、話に注目できない →叱られないために聞いているふりをする→心が苦しくなるだけで、理解度は上がらない
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・漢字を覚えてこない子はもっとたくさん書かせるべき →先生に叱られないために言うとおりにする →たくさん書いても覚えない、漢字を書くことと苦痛が条件付けされ、さらに覚えにくくなる ↓ 新しい対応 書く回数を大幅に減らし、覚えることに注力できるようにする。空書きを重点的にする、漢字の成り立ちの知識を伝える、楽しい読書体験など様々な感覚を活用する。目標を「読める」こと重視にする。漢字以外の言語能力(話す、聞く、表記よりも内容重視)を伸ばす。 |
・宿題をして来ない子は休み時間にするべき 家庭の環境によって宿題に取り組む行動が実行できない →先生に叱られないために言うとおりにする →宿題をして来ない仕組みは解消されておらず、宿題をしてくるようにはならない。 先生に言われて書くだけ書いても頭に入っていない。 ↓ 新しい対応 宿題の内容を見直す、自主学習課題を取り入れる。家に帰ってからの行動を振り返り、見直しをする。家ですることにこだわらず、学校ですることを許す。できなった時に学校で罰としてさせずにできたときにしっかり着目し、どうしてできたのかというわけを把握し、その方法を継続する。 |
・授業中は立ち歩くべきでない →立ち歩く子を何度も注意する →子ども「立ち歩くと注目してもらえる」 →さらに立ち歩きが増える →他の子も追従 →学級崩壊 ↓ 新しい対応 立ち歩きへの注意をやめ、前向きに授業を受けている子を相手に授業をする。立ち歩く子への課題設定の見直しをし、少しでも適切な行動ができたら「できたね」「(他の子の妨げにならなくて)助かったよ」と必ず伝えるようにする。 |
・リストカットはしてはいけない →子ども「ばれないようにしよう」 →わからないところでエスカレートしていく →重大な事故 ↓ 新しい対応 「いけない」と止めさせようとせず、まずしっかり気持ちを聞く。止めたいと思っているのか?するとどんな気持ちになるのか?命を守る手段について決めておく。切ってしまったら叱らないと約束して必ず報告するなど。その上で下地となっている感覚を知り、ケアをしていく。 |
まとめ
・方向性のズレとは、「正しい」ことをしているのに「上手くいかない」状態
・「正しい」より「上手くいく」を目指しましょう(実用主義:プラグマティズム)
・「上手くいく」方向に転換する方法 ①方向性のズレに気付く ②「正しくない」考え、方法を採用する
・「正しさ」によって「上手くいっている」ことは継続しましょう